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『野辺の出来事』 [深大寺恋物語]

 住宅の密集した狭い路地を南に抜けると田園風景が広がる。稲穂にさざ波を立てるように絶え間なく吹く風に、実りを迎えた穀物と水の匂いが混じっていた。刈り入れを前に田の水は抜かれていたけれど、豊かな湧水を集める疎水が勢いよく走っていて辺りには水の気配が濃い。疎水に沿った農道を僕はサヤ姉と歩いていた。夕暮れが近づいている。近くを散策するだけのつもりが、つい足をのばした。
 広々とした田園の中に建つ高速道路が、西の山並みに向かってのびる。山の端にかかる雲は黒く、わずかにのぞく空が少しだけ焼けていた。
「見て」
 ふと足を止め、サヤ姉が言った。
 高速道路の橋脚の足元辺り。風に揺れる稲穂に見え隠れして、ぼんやり光るものが見えた。光はとても淡くまたたくので僕は見間違いかと目を凝らす。
 そうしているうちに淡い光は二つ三つと数を増し、列をなしてまたたいた。今にも消え入りそうなはかない光に、僕は葬列という言葉を思い浮かべる。
「狐火。ひさしぶりに見た」
 サヤ姉が、その光のように淡く微笑んだ。
 東の空に十三夜の月が昇り始めていた。
 あの日以来、狐火を見ない。

 サヤ姉は母の齢の離れた妹で僕の叔母にあたる。物心ついた時にはサヤ姉と呼んでいた。きっと母に言われたのだろう。
 サヤ姉が東京の西の郊外に家を買ったのは十年前のことになる。その辺りで一番の繁華なターミナル駅から、川崎行の電車に乗り換えて数分のところだ。
 家を買った当初はうれしかったのだろう、度々「遊びにおいでよ」と連絡をもらった。遊ぶといっても水と緑の多い周辺を散策し、夜にサヤ姉の手料理で酒を飲む、という程度のことだ。それはちょっとした一泊旅行のようで僕はとても楽しみにしていたのだ。もしかすると、当時社会人三年目にして会社員生活に行き詰まっていた僕を、気遣ってくれたのかもしれない。その後、僕が何とか気持ちを立て直すにつれて、その交流は間遠になっていったから。
 母はいつまでも独り身の妹を心配していたけれど、家を買うに至っては半ば感心して「大したものね」とつぶやいた。母とサヤ姉は仲がよかった。
 よくうちに泊りがけで遊びに来た。東京の西の県境に近い山あいの町から、電車で二時間かけてやって来た。そして、うちからほど近い新宿のデパートへ母と買い物に行くのだった。小学生の頃の僕は単純に出かけることが嬉しくて、いつも二人について回った。荷物持ちの男手として重宝されるのは、もう少し後のことになる。
 その夜は、デパートの食品売場で買って来た惣菜と日本酒で、母とサヤ姉は遅くまで飲むのだった。
 僕にとってサヤ姉は、親類の中で一番近しい人になる。
 結局、生涯独り身だった。
 サヤ姉の忌明けから一ヵ月が経つ。

 家を出るのが遅くなり、改札を抜けた時には夕暮れが迫っていた。様子を見に来ただけで急ぐ用事があるわけでもない。ひさしぶりにサヤ姉の家に泊まってしまおうと考えていた。
 サヤ姉の葬儀とそれに伴う諸々の手続きで「ゆっくり悲しんでいるひまもない」とこぼしていた母に、疲れた顔で「サヤの家を見てきて」と合鍵を渡されたのが三日前だった。
 道幅の狭いわりに交通量の多い国道から右に路地へ入ると、道に沿って小さな川が流れる。住宅地を流れる川は小さく浅く、数歩で渡れる川幅で、僕は最初疎水かと思った。
「これは川。矢川」サヤ姉に訂正された。「うちの前の雑木林が水源」
 流れが速いのは、ふんだんに湧く水が細い水路に流れ込むことが理由らしい。
 川向うに並ぶ家は、どの家もこちらに背を向けていて、裏庭から川へ下りる小さな階段があった。けれど、その場所で何か洗い物をする人の姿を、見たことはない。
 この道を歩くのは何年ぶりになるだろう。昔、サヤ姉と一緒に歩いた道。散策の帰り、日が暮れて少し肌寒くなるような時、手をつないで歩いた。僕が子供の頃と変わらない感覚だったのだと思う。サヤ姉の手はとても冷たかった。
 一度、不思議な音を聞いたことがあった。今のような夕暮れ時だった。サヤ姉に言われて注意深く耳をかたむけてみると、じゃらじゃらと砂利を踏むような音が小さく聞こえる。その音はサヤ姉の家が近づくにつれ、次第にはっきり聞こえてくる。
「小豆洗いかな?」
 僕の腕にしがみつくようにサヤ姉が体を寄せてきた。僕はサヤ姉の顔を間近に見た。真顔で冗談を言うような人だから本気かどうか分からなかった。
 建ち並ぶ家の、連なる屋根の向こうに黒々とした雑木林が見え始め、サヤ姉の家まであとわずかというところで不思議な音はぴたりと止んだ。立ち止まって耳をすませる。静かな住宅地に川の流れる水音だけがしていた。ここから川はゆるやかなカーブを描いて道から離れ、雑木林の奥へ消えてゆく。
 僕とサヤ姉は顔を見合わせた。
 サヤ姉がいたずらっぽく笑う。
 この町に境界を引くように川は流れていた。

 夜中に不意に目が覚めた。辺りが妙に明るかった。見慣れない天井に半身を起こした時、サヤ姉の家に泊まったことを僕は思い出した。二階の四畳半の座敷。泊りがけで遊びに来た時は、いつもこの部屋で眠った。
 西に向いた窓の外がぼんやりと明るい。路地を挟んで向かいにある、雑木林の樹冠が白く光っている。見上げると丸い月が煌々と町を照らしていた。
 僕はふと思いついて壁にかけてあるカレンダーをめくった。カレンダーは七月のままになっている。九月二十一日のところに十五夜の文字が見える。そうすると今夜は十三夜。僕はもう一度窓の外を見た。
 その時、目の前を右から左に何かが動いた。
 その何かは雑木林の葉叢の陰で急に動きを止めた。僕の気配に立ち止まったように見える。月の光が作る、葉叢の濃い闇の中で二つの黒い影が身じろぎする。二つの影はのそりと首をめぐらせて振り向くような仕草を見せた。金色の二対の目がじっとこちらを見る。思わず僕は窓を開けようと鍵に手をかけた。その刹那、二つの影ははじかれたように月の光の下に躍り出た。
 ケモノだ。
 灰色の毛をした、細長い体をもった二匹のケモノが綱渡りのように、電線の上を走るのだった。直後、二匹は素早く身をひるがえし、電線近くまで伸びた太い枝に飛び移った。そのまま枝伝いに葉の茂る雑木林の奥へ逃げ込み、すぐに闇にまぎれた。
 僕は何かよくないものでも見た気になって布団に潜り込み、大きく息を吸い込んだ。
 黒胡椒の匂いがした。
 サヤ姉の匂いだった。

 翌朝、窓から見える空は秋晴れだった。起きだして窓を開けると、家の前を箒で掃いている若い女性と目が合った。女性は道に散らばる落ち葉を掃き集めていた。
「あの、失礼ですが……私、隣の者なのですが」
 と、こちらを見上げる。当然の問いかけだった。
「すみません。甥です」
 ああ、と納得したようにその女性は「この度は」と言った。
 僕はとりあえず顔だけ洗うと、着替えて外に出た。
 女性は掃除を終えていた。大きなざるを抱えて階段を、川へ下りるところだった。僕に気がつくと立ち止まって少し頭を下げた。
「たぶん、お会いしたことありますよ、昔。私、小学生でしたけど」
 そう言われて僕は記憶の底をさらった。サヤ姉の隣に住んでいた小さな女の子と、家の前で何度か顔を合わせた覚えがある。サヤ姉と立ち話をする間、玄関先に突っ立って、その様子をしばらく眺めていた。どことなくふくれっ面の、口数の少ない、おとなしい女の子で、サヤ姉ばかりが一方的にしゃべっていた印象がある。名前は確か……。
「アヤです」女性が言った。「サヤさんには子供の頃からお世話になったんです。私ずっと、母と二人暮らしで」
 アヤは階段を下りて川べりにしゃがみ込み、持っていたざるを水につけた。ざるの中には木の実のようなものが入っている。アヤは米をとぐような手つきで中のものを洗い始めた。
「サヤさんが亡くなる少し前、うちで飼っていたうさぎが襲われたことがあって」
 アヤは洗う手を休めずに話を続けた。
「うさぎ小屋の金網が喰い破られていて、中にうさぎはいませんでした。そのうさぎをサヤさんが見つけて抱えてきてくれたんです。もう肉塊でしたけど」
 ざるの中はきっと固い木の実なのだろう。じゃらじゃらと大きな音がたつ。
「うさぎ小屋は少し高いところにあったから油断してました。木登りが得意なケモノもいるんですよね。電線を綱渡りしちゃうくらいの」
「そのケモノは何て?」僕は聞いた。
「最近、この辺りに増えていて。ハクビシンっていうんです」
 アヤはさらに力を込めて木の実を洗う。じゃらじゃらと鳴る音は砂利を踏むように聞こえる。その音が辺りに響く。アヤにとって手慣れた作業なのだろう、職人の手仕事のように軽快に音を鳴らす。
「そこの林で拾ったオニグルミです」アヤが言った。
 オニグルミが実を落とす今の時期、子供の頃から毎年拾ってきては、こうして果皮を洗い落として殻を割り、炒って食べているそうだ。
「サヤさんも好きだったから。お酒のつまみにしてました」
「毎年一緒にクルミ拾いを?」
「子供の頃からずっと毎年。サヤさんに教えてもらったんです、採り方や食べ方。山育ちでしょう」
 アヤはじゃらじゃらと砂利を踏むような音をたて続けた。
 この音……。
 その時僕は、つい笑いだしてしまったのだ。サヤ姉のいたずらっぽく笑った顔を思い出す。まったく。
 アヤが不思議そうに僕の顔を見た。
「これ、サヤさんの仏前に供えてもらえますか」
 込み上げる笑いをかみ殺して僕は「ありがとう」と言った。
 サヤ姉が知っているのだから、母も食べ方を知っているだろう。
 僕はサヤ姉が十年暮らした家を見上げた。ここまで来る途中、荒れ果てた空き家を何軒か見た。この家もいずれ処分しないといけないのだな。
 オニグルミを洗い終わったアヤが立ち上がり、伸びをして空を見上げた。空の高いところに刷毛で掃いたような雲がなびいている。
「お彼岸になりますね」アヤが言った。
 雑木林の梢を何かが揺らして、掃除したばかりの路地にまた落ち葉が降った。

                                      (了)

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※第2回角川武蔵野文学賞

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『水辺の生き物』 [深大寺恋物語]

 その朝僕は、夢うつつに水の落ちる音を聞いた。細く小さく、長く尾を引いた音が止むと、大きく水の流れる音がした。扉を開け閉てする音がして薄く目を開けると、細く開いた掃き出し窓のカーテンの隙間から朝日が差し込むのが見えた。畳の上にほこりが舞っている。前の晩から降っていた雨は上がったようだった。寝返りをうって左を向くと、隣に寝ていた草子さんの姿はなかった。
 蛇口をひねって水を出す音がした。続いてガスコンロに火を点ける音。台所で草子さんが、湯を沸かし始めたらしかった。草子さんの朝は、濃いめに淹れた煎茶を飲む。僕はそのことを、この二ヵ月で知った。梅雨入り前のよく晴れた、日曜日の朝だった。
 始まりはおっとりしたものだった。いや、始まりだか何だかよく分からないまま、こうして週末ごとに草子さんの家で目を覚ますことになった。両者の好意を確かめ合うプロセスとか、それに伴う劇的な出来事とか、男女交際が始まるには何かそうしたものが必須のように思っていたけれど、それは三十半ばの年になっても、さして経験のない僕の、勘違いみたいなものなのだろう、と思うことにしている。
「おもしろいこと言うね。祐平は」
 以前にこの考えを述べた時の草子さんの反応だ。
「愛の言葉とか、無理にささやかなくても、いいんだよ」
 吹き出すのをこらえるような顔だった。僕はといえば、その時の草子さんの笑顔(?)に、まんまとやられてしまったわけなのだった。
 布団から這いだして襖を開けた。隣の座敷の卓袱台には、急須と湯飲み茶碗がひとつ、置かれたままになっていた。草子さんの姿はなく、柱に掛けられた振り子時計の音だけが、静かに時を刻んでいた。午前七時。きっと草子さんは、朝の散歩に行ったのだろう。
 古ぼけた水屋箪笥の上に水槽が二つ。片方の水槽にはゲンゴロウが六匹とヌマエビが三匹。二匹のゲンゴロウが真ん中に置かれた石に上って甲羅干しをしていた。
「背中の模様がなんか和風で、かわいいでしょ」
 草子さんは言っていたけれど、体長が一センチほどなのでよく見ないと分からない。
「一センチの体長って、虫の世界では大きい方なんだよ」
 草子さんは、そうも言っていた。僕には今ひとつピンとこない話だったけれど。
「ご主人は散歩?」
 僕は隣の水槽にいるカメのマリエルに話しかけた。マリエルは鼻先だけを水から出して、ぼんやり浮いている。
「カメって鳴くらしいよ」
 草子さんは、そんなことも言っていた。時々僕は、水槽に顔を近づけて耳をすましてみるけれど、鳴き声を聞いたことは、まだない。草子さんも聞いたことはないそうだ。カメもゲンゴロウも家の裏を流れる野川で捕まえてきた、ということだった。
 僕は顔を洗おうと、自分のかばんからタオルと歯ブラシを取り出して洗面所へ行った。歯磨き粉だけは草子さんのものを借りることにしている。歯ブラシをここへ置いてしまうのは、草子さんの領域を侵食するようで気が引けたのだ。洗面所の出窓を開けると、薄暗い家の中とは対照的な初夏の日差しがまぶしかった。青空を背景に、川向こうに見える雑木林の新緑が、朝の風に揺れていた。出窓からの風景を眺めながら、歯を磨いているうちに「朝の散歩に行こう」と、僕も思った。
 玄関の鍵は開いていた。ちょっと近所に出かけるくらいなら、草子さんは鍵をかけない。僕もそのまま家を出た。赤いトタン屋根の小さな家。
 一人暮らしというものだから、単身者向けの賃貸アパートに住んでいるものと勝手に決めつけていたので、初めて訪ねた時は意表をつかれた。
「その辺に座ってよ」
 言いながら草子さんは、引き戸を開けて玄関から続く茶の間に上がった。左手に奥へ続く短い廊下があって、申し訳程度の台所が設えられている。突き当たりに洗面所が見えた。
 草子さんは奥へ続く襖を開けると、狭い庭に面した掃き出し窓も開けて網戸を閉てた。六畳の、二間続きの座敷を風がゆるく抜けた。その途端、家に染み着いた他者の生活の匂いみたいなものを感じて、僕は身の置き所のないような落ち着かない気分になった。その匂いにもこの二ヵ月ですっかり馴染んでしまったけれど。
 家の横の路地を下りると野川に沿った遊歩道に出る。草子さんの、朝の散歩はこの道を上流に向かって歩いて、また戻ってくる。三十分の時もあれば一時間の時もあって気まぐれだ。どうであっても、この道を歩いていけばどこかで会えるだろうと思って、その道を上流へ向かって歩いた。
 川沿いに建てられた、居並ぶ家が途切れたところで、ぽっかりと田圃が現れる。その田圃は、奥の雑木林から野川に流れ込む水を引いているのだ、と草子さんから聞いた。田圃に引かれた水は遊歩道の下に作られた水路を通って野川に流れ込んでいる。
 草子さんは水辺が好きだと言った。
「さやさやと流れるくらいの水が好き。海とか池は水が多すぎて重たそうで、溶けた鉛みたいで」
 そんなことを言う草子さんは、ここからずっと西の山あいの町で生まれた。家の裏が沢と棚田で水の流れる音が絶えず聞こえる場所で育った。
「沢は細くて急だから、さやさやより、少しだけ流れは激しいかな。雨にも左右されるし。台風一過の朝なんかすごいよ。降った雨がすぐに出てきちゃうのね」
 激しく流れる沢からは、ひんやりとした空気が立ち上って涼しくなるという。その辺りではどの家も沢から水を引いていて、生活用の水はそれですべてまかなわれているそうだ。
「今、水道代を払ってるのが残念で」
 草子さんは本当に残念そうに、そう言ったものだった。
 護岸された川岸は、この辺りで終わり、そこから先は土手が続く。土手には夏草が丈高く伸びていて、濃い緑の葉を茂らせている。昨日の雨で多少増水したらしく、水際の草は流れに沿って倒れていた。
 こうした夏草の繁茂する勢いは、僕に「獰猛」という言葉を連想させる。春先、道端に咲き始めた野の花に春の到来を感じて油断していると、瞬く間に侵食される、そんな気分なのだ。侵食は怖い。
 草子さんは大体いつもこの辺りで遊んでいる。そう思って辺りを見回した。
 いい年をした大人の女性に「川で遊んでいる」もないものだけど、そうなのだから仕方がない。いい年と言ったものの本当の年齢は知らない。僕より年上ということだけ教えてくれた。それ以来、僕は「さん付け」で呼ぶけれど、草子さんは僕のことを呼び捨てだ。
 川の方を見ながら歩いていると、土手の夏草の向こうに草子さんの後ろ頭が見えた。草の上に体育座りをしている。ジーンズの裾が膝までまくり上げられていて、サンダルを履いていた。
「おはよう」僕が声をかけると、
「ああ、祐平……」と力なく言った。
「休憩してるんだ。疲れちゃって」
 川虫を捕ってたんだ。マリエルのエサに、と草子さんは話し始めた。

 網とバケツを持った小学生の男の子が三人やって来たんだ。四年生くらいかな。「何してんの」って、聞かれたから、川虫を見せてあげたら「ひょえ~」って言って逃げちゃった。まったく男のくせに。

 そう言って、捕った川虫を入れてあると思われる、小さなタッパのふたを開けようとするので、僕は「いえ結構です」と断った。

 男の子たち、とても楽しそうだったから、混ぜてもらって一緒に魚捕まえてた。ドジョウとかタナゴとか、ザリガニが目的みたいで、私が捕まえたタガメには興味を示さなかったな。それで帰りがけにね「ありがとう、オバさん」って言ったのよ! 奴らは!

「えらい子供だな、きちんとお礼が言えて」僕は言った。
「そうきたか」
 草子さんが笑いながら立ち上がった。
「帰って朝ごはんにしようよ。お腹へっちゃった」
 そうしたわけで僕はまたすぐに、来た道を戻ることになった。散歩は歩くことが目的だから、別にいいだろう。手をつないで歩いた。草子さんから手をつないでくるのはめずらしい。
「えへへ」と言いながらつないできた。
 左手に、川虫のタッパを入れたカンバス地の小さなバッグを下げている。そのバッグから青いものがのぞいているのが見える。
「それ何?」
「ん? ああ、セリ。土手で摘んだんだ。おひたしにして食べよう」

 草子さんと手をつないで、来た道を戻る。朝の風がゆるく顔にあたる。来る時は背中から吹いていたので感じられなかった風だ。雨上がりの、草と土と水の匂いがする。やけに体の細い真っ黒な翅のトンボがゆらゆらと川面を流れていった。
「あのね」草子さんが言った。
「何?」
 上目づかいで「ふふふ」と言った。そして芝居がかった、もったいつける顔をする。
「私ね」ここでまた間をとった。何を言おうとしているのか。
「何?」
「今朝、マリエルの鳴き声聞いちゃった」満面の笑みで言った。
「えーっ、どんな?」
「教えなーい」
 草子さんがつないた手を大きく振った。勢いがついて少し早歩きになる。
 家に着く頃にはごはんも炊けているという。
 おかずは、めざしと玉子焼き。それに、セリのおひたし。玉子焼きは甘くするよ。味噌汁の具はじゃがいもと豆腐。
 聞いていると腹がへってくる。
 早歩きのまま、帰り道を歩く。
 野川はゆるゆると流れている。

                                      (了)

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※第1回角川武蔵野文学賞

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『箱庭』 [深大寺恋物語]

 ハナは本当は「華恵」という名前なのだけど、自分の名前を好きではない。持ち重りのする感じがして。呼ぶ時は「ハナ」にして、とつき合い始めた頃に言われた。そして「書く時はカタカナで」と言った。ハナは水辺が好きだった。山間の小さな町で、家の裏が沢と棚田で、水の流れる音が絶えず聞こえる場所で育ったから。「こういうこと言うの、照れるけどね」言いながら教えてくれた。
 ハナは深大寺に住んでいた。それで僕は深大寺が寺の名前ではなく、町の名前だと知った。そう言うと「お寺もあるよ」ハナは真面目な顔で答えた。住んでいる家は、叔母に安く借りていると言っていた。「叔母のために借りてあげてるけど、駅から遠いところがね」不満げに、そう言ってもみせたけど、山間の実家に出戻って一人で暮らしている叔母を、ハナは好きなようだった。狭い庭を菜園にして野菜を育てている様子から、満更でもないように思えた。水辺、と言えなくもない場所でもあることだし。
 その家は、六畳の二間続きの座敷があって、申し訳程度の台所が設えられた、赤いトタン屋根の小さな家だった。狭い庭に立てられた園芸用の支柱に、大きな濃い緑の葉が茂っていて、葉陰にキュウリが見え隠れしていた。収穫した野菜を叔母に送ると、手厳しい批評が返ってくると、ハナはうれしそうに言っていた。見上げるほど、背の高い木立に囲まれたそこは、深大寺の杜の一部なのだった。
「うちにおいでよ」と言われてから、僕は度々ハナの家を訪ねた。たいていは週末に。日曜日の朝は、ハナの家で目を覚ますことが、じきに習いになった。これほど近しく女性とつき合ったのは、三十半ばのこの歳で初めてだった。ハナを間近に感じた時、僕はその存在感に驚いた。小柄で薄い体をしたハナでも、四十数キロの体重があるのだろう。人という曖昧な存在を、四十数キロの重みをもった物として感じた時、その現実の手応えに圧倒されたのだ。こんな物が降ってきたら、と僕は飛び降り自殺に巻き込まれた人が、ひとたまりもないのも当然だ、と考えた。「おもしろいこと言うね、祐平は」ハナは言った。「そういうとこ、好きだよ」
 最初からハナは唐突で、理の勝ったタイプだと自分で言うわりには、とりとめがなかった。「ダメ男と、どうしても別れられない女がうらやましいくらい」と言って、「あ、そうでもないかな」と言い直したりした。「私にも好みのタイプがあるんだよ」ハナは言った。その範疇に僕が入っている、というだけのことだ。祐平だって私じゃなきゃ、ってことはないでしょう。きっとハナは、そうも考えているのだ。理の勝ったハナならば。「人との関わり方、しゃべる間合いやしゃべり方、そういう些細なことに、祐平とは共感できると思ったから。それが大事で、それで十分。しゃべる声のトーンですら、気に障る人がいるよ、私」
「共感」。そんなふうに言葉にされると、つかみどころのなかったハナに対する感情が、調えられていく気持ちになった。自分の感情を言葉にして初めて知る思いだった。言葉にする前は模糊としていた。僕はハナとしゃべっていると楽しい。「祐平は、蕎麦をコーラで食べられる?」

 日曜日の朝に目を覚ました時、ハナがいないことがたまにあった。この周りを散歩しているという。「どこを歩いても水の気配があっていい気持ち」ハナは言った。これも照れながら。自分のこだわりを人に話す時、ハナは照れ隠しに笑った。その照れ笑いを見る度にうれしくなった。こんなことを話すのは君だけ、と言われている気がしたのだ。
 一度、朝の散歩を後から追いかけたことがあった。この界隈にいるのだから、どこかで会えるだろうと思って。その日は梅雨入り前のよく晴れた朝だった。前の晩から降っていた雨が上がって、日差しがこれから蒸し暑くなりそうに感じられた。本堂の、山門の前を左右に伸びる水路に、あふれそうな勢いで水が走っていた。この時間は、居並ぶ蕎麦屋から開店準備の喧噪がするだけで、観光客の姿もなく静かだった。日差しを避けるように雑木林の木陰へ、水路伝いに道を歩いた。木漏れ日がはるか上から降ってきて、水路からひんやりとした空気が立ち上っていた。薄暗い雑木林の底には、背の低い雑多な木や草が生えていて、その合間に小さな白い花が点々と、灯るように咲いていた。よく見ると水が流れていた。あふれた水が行き場をなくして無秩序に流れている、といった様子だ。幾筋もの細い水の流れが、草木の間を下って一つに連なり水路に流れ込んでいた。この辺りは豊富に湧く水が、たて横に切られた水路を巡っていた。ハナの言う「水の気配」を感じられたように思った。何も手を加えなかったら、この一帯は湿地だったのだろうか。
「そうかもしれないね、たぶん」ハナはほとんど深大寺の杜のはずれで、四角く切り出されて、横倒しにしただけのような石に腰かけていた。ハナの見上げる先で二匹の竜が、勢いよく水を吐き続けていた。「不動之瀧」瀧の名が掲げられていた。「自然に手を加えたら、それを維持する手間が要るよね……。あの竜の上のところで、落ち葉を掃除してるおじさんを見たことがあるよ。水路が詰まると竜が水を吐けなくなるから」ハナは言った。「あの竜、ちょっと受け口でしょう。水を吐くというより、飲み過ぎちゃった水を、口からあふれさせてるみたいで。かわいい」

 ハナの家を訪ねる時は、三鷹駅から南へ下るバスに乗った。街中の雑踏を抜けたバスが、妙に広々とした平たい風景の中へ入ると、その先に巨大な濃い緑の塊が現れた。深大寺の杜。あの中にハナの家があるのか、と思うと、ハナが深い森に住む不思議な生き物めいて感じられた。ハナと会っていた時間を後で思い返すと、どこか現実感が希薄だった。そのせいじゃないかと思った。バスに揺られ、次第に近づいてくる緑の塊を眺めていると、非日常に足を踏み入れるような気がしてきた。ハナを間近に感じた時の現実の手応えは、家に帰って一人になった途端、するりと指の間からこぼれ落ちた。ハナが不意にいなくなっても、やっぱりあれは僕の妄想だったのかと、納得してしまいそうだった。不安が入り混じっているのに、悪い気分ではない。ゆらりとした、この気分は何だろう。いつまでも、その気分の中をたゆたっていたい。でも、そういうわけにもいかなかった。現実は、時間が過ぎるし事情も変わる。「叔母が亡くなったの」ある日、ハナが言った。「この家を引き払わないといけなくなりそう」

 ハナは唐突に僕の前からいなくなった。連絡をとる気になればとれるのだから、いなくなったという言い方は適当でないかもしれない。あれこれ考えているうちに時機を逸してしまったのだ。叔母という人が亡くなって、少しばかりハナは悄然としていた。悄然とした気持ちを前面に出すようなハナではないから、僕は何となく落ち着かない心地でいた。ハナには、何か思うところがあるように感じられた。ひと月ほど経って、ハナは一つ小さなため息を吐くと「よし、引っ越す」と宣言した。事を決めた後の、ハナの行動は速かった。元々家具付きで借りていた家だ。手早く荷造りを済ませると、僕には何も知らせずに、引っ越していったのだ。その顛末を僕は、あわあわと眺めているばかりだった。そんな成り行きだったのだ。連絡するのもためらわれた。年相応の世間知を身につけた大人ならば、こうした時、とるべき行動を知っているのだろう。知らないという引け目から、僕は現実を薄めて感受して、子供のようにふるまっていたのだ。だからハナは僕に何も言わなかった。子供に相談しても仕方ないのだから。
 今になってハナに対して抱いていた、つかみどころのない感情が何だったのか、よく分かる。答えを得て初めて疑問の正体を知った思いだ。僕はハナが好きだったのだ。

 ハナの引っ越し先は叔母の家ではないかと、ふと思うことがある。蕎麦をコーラで食べてみようかと思うこともある。ハナに連絡してもよいのではないかと、思わないこともない。今でも、深大寺へはたまに行く。

 赤いトタン屋根の小さな家の玄関には「売家」の看板が下げられている。
                                      (了)

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※第15回深大寺恋物語

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『弥子さんの散歩』 [深大寺恋物語]

 意外なことに、弥子さんは散歩が好きだ。住んでいる下連雀のマンションから、深大寺くらいまでの距離なら、足ならしだそうだ。歳も三十半ばを過ぎ、腰回りの肉付きが気になり始め、少しは運動しようと考えたのが、散歩を始めたきっかけらしい。「走るのはきついから、ウォーキングをしようとしたんだけど、背筋を伸ばすとか、歩幅がどうとか、やり方が面倒で、今はただ散歩してるだけ。それが思いの外楽しくて」両腕の肘を九十度に曲げて大きく振る仕草を見せながら、弥子さんは言った。弥子さんの腰回りの肉付きが、どの程度のものなのか、服の上からでは知る由もないけれど、肉付きの一因と思われる、酒を控える様子は一向にうかがえないのである。「どちらかというとインドア派なんだけど、うっすら汗をかくくらい歩くと気持ちいいし、その後のビールもおいしく飲めるし」そう言った弥子さんは、自分の発言と目的の矛盾に気づき、「ダメな、私」とつぶやいた。用意をするとか、予定を立てるとか、そうした行動が苦手な弥子さんは、何の準備もせず、気軽に出かけられる散歩が、性に合ってるんじゃないか、とその時僕は思った。

 誘ったのは弥子さんの方からだった。桜がすっかり散った頃のこと、退社時間に帰り支度をしていたところへ、「明日、ヒマ?」と声をかけられた。私もヒマだし、陽気もいいし、散歩に付き合わない? と弥子さんは言ったのだ。一瞬、何を言われたのか分からなかったけれど、明日の休日、二人でどこかに出かけようと言っているらしい。僕は喜んで承諾した。実は前々から、弥子さんのことが気になっていた、ということではなく、職場の先輩の誘いを断る模範解答を用意していなかったから、ということでもなく、女性から誘われた、という事実、その一点のみに、舞い上がってしまったのだ。

 翌日、弥子さんの言う散歩は、言葉の綾ではなく、文字通り散歩だった。野川に沿った遊歩道をぶらぶらと深大寺まで歩く。昼ごはんは、道中、護岸されていない野川の土手に、ビニールシートを敷いて、弥子さんの作ったお弁当を食べた。「定番」、と言って出してくれたお弁当は、鮭とおかかと梅干しのおむすび、唐揚げと甘い玉子焼きだった。小学生の遠足のような、この散歩が、僕にはたいそう心地よかった。けれど一方で緊張もしていた。女性と相対した時に、どう振る舞うのが正解か、いちいち考えてしまうからだ。女性との交際経験に乏しいことが理由だろうと見当はついているけれど、問題の解決に向けて、深く考えたことはない。そういえば弥子さんは、歩いているといろんなことを考えると言っていた。僕が考えごとは苦手だと言うと、「じゃあ散歩、してみるといいかも」と言った。そんなふうに始まった弥子さんとの散歩は、大体二週ごとに弥子さんが誘ってくるので、梅雨入りの頃にはすっかり習慣となっていた。二週間ごとというサイクルが、僕にはちょうどよかった。

 梅雨の間は散歩が捗らない。毎週雨が降るわけではないけれど、天気を気にしながらの散歩は、今ひとつ気分が乗らない。今にも雨が落ちてきそうなその日は、井の頭公園をぐるりと巡り、弥子さんのマンションまで歩いた。「ウチに寄ってよ。お茶くらい淹れるよ」と弥子さんは言い、今日は今ひとつ盛り上がりに欠けたから、ちょっとしたイベント。ケーキでも買おうか、と続けた。
 弥子さんの部屋はあっさりしたもので、六畳のフローリングのワンルームに、シングルベッドとローテーブルが置かれているだけだった。僕は率直に、女らしくない部屋だなあ、と思った。一人暮らしの女性の部屋を他に知らないけれど。「どうぞ」と言って、コーヒーを置いてくれた弥子さんに、どうして僕を誘ったのか、聞いてみた。以前から聞いてみたいことだった。弥子さんは「え?」という不思議そうな顔をして、「与しやすし、と思って」と言った。その答えを聞いて僕は、楽に付き合えそうだ、と思った。付き合う? お互いに決定的な言葉を交わしていない、この状態を何と呼ぶべきか、僕はどう振る舞うのが正しいか。「百戦錬磨、なんですね、弥子さんは」僕が言うと、弥子さんは「百戦錬磨とか、言っちゃう? そういうの分からないでしょう。無理しないで」と言った。その瞬間僕は、自分の振る舞いが正しくなかったことを知った。

 梅雨が明けるといきなり真夏になった。その週はサイクルからすれば、弥子さんと会う週ではなかったけれど、僕の方から深大寺へ誘った。初めてのことだった。弥子さんは少しの間逡巡する様子を見せたけれど、結局承諾した。

 当日午後一時。僕は弥子さんのマンションまで迎えに行った。呼び鈴を押す。ドアの向こうで人の動く気配がするものの、なかなかドアは開かない。ようやく出てきた弥子さんは半分眠っているような顔で、寝ぐせをたくさんつけていた。「まあ、入ってよ」と言いながらベッドに潜り込み、「朝帰り……」とつぶやいた。二日酔いで、あと一時間あれば復活するから先に行ってて、と言うのが精一杯の様子だった。

 そうして結果、僕は一人で深大寺にいる。本堂へのお参りはせずに水生植物園に入った。弥子さんの好きな場所の一つで、最初の散歩の時にも来た場所だった。草木が奔放に伸び広がっている感じと、水辺が好きだという。「谷戸のせせらぎや湿地に生育する生物を観察できます」案内の看板を声に出して読んでみる。炎天下の水生植物園は人影もまばらだった。
 深く切れ込んだ谷戸の両脇にそびえる木々は、生命力溢れる獰猛な濃い緑に葉を繁らせ、弥子さんと来た時の新緑の面影は微塵もない。その木々に見下ろされるように真ん中の木道を歩く。足の裏に伝わる木の感触が心地よく、いつまでもこの上を歩いていられそうな気がした。歩きながら考える、と弥子さんは言った。深く考えることが苦手な僕は何を考えればよいだろう。行く手はミソハギに埋め尽くされている。ピンク色の小さな花をつけ、丈高く伸びたミソハギが強い風に大きく揺れている。葉ずれの音が耳ざわりなほど大きくなり、遠雷が聞こえた。
 ここ三ヶ月、歩く時はいつも隣に弥子さんがいた。今、こうして一人で歩いてみると、内面がのびのびする感じがする。ずっと一人でやってきたのだ。今まで棚上げしていた問題が、ばらばらと降りかかってきた気分だった。風がいっそう強くなり、見上げるといつやって来たのか、空は黒雲に覆われて暗く、稲光が見えた。と同時に落雷と思われる大音響に辺りは包まれ、ビー玉のような雨粒が落ちてきた。目の前に見える東屋に向かって走り出す。数メートルを走る間に全身がずぶ濡れになってしまった。中のベンチにへたり込むように座ると、尻に貼り付くジーンズの感触が不快だった。雨樋のない東屋は軒から雨水がとうとうと流れ落ち、その先の地面を穿った。雨だれの忙しなく落ちるところを僕はぼんやりと眺めていた。弥子さんは昨日の夜、どこで誰と飲んでいたのだろう。そんな思いが頭をよぎる。けれど考えはまとまらない。濡れた服が体にべったりと貼り付く不快感に思考を邪魔されるのだ。うそ寒くもなってきたし、空腹も感じる。
 急に心細さがやってきた。こんなところに降り込められて、寒さと飢えにさいなまれて。小さな子供のように、家に帰りたくて泣きたくなった。
 激しい雨に風景は薄墨色に変わり、強い風にミソハギが髪を振り乱すようにうねっている。その風景の中を、赤いものが近づいてくる。目を凝らすとそれは傘だった。黒いレインコートにゴム長を履いた人影が、赤い傘を差して、こちらに向かってゆっくりと木道を歩いて来るのだった。
 こんなところへ、そう都合よく弥子さんが来るわけがない。そんなはずはない。と思う間に、黒い人影は東屋の入り口に立ち、レインコートのフードを取った。
「おまたせ」と弥子さんが言った。
「はい、お弁当」と言って弥子さんが差し出したのは温かいおむすびだった。
「空腹で寒くて、死ぬかと思った」と僕は言った。
「大げさね」
 僕は弥子さんの手を握った。
「来てくれてありがとう」
「握り方が不慣れね、やっぱり」
 そんなことは、もうどうでもいい、と思った。
「部屋の風呂、貸して下さい」
 弥子さんは、大きく見開いた目を、くりくりさせて言った。
「この近くに、いい立ち寄り湯もあるのだけど……どうしようかな」
                                    (了)

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※第13回深大寺恋物語

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